甘ったるい彼等【短編集】(雪男) (ページ3)

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翔太 side

『次は泣くのかよ、忙しいなぁお前』
「だって、翔太ペアとか嫌いじゃん、、なのにさ、こんな…」

さっきまでこーやって踊っちゃうんだからと楽しげに喜んでたかと思えば、今度はじっと指輪を見つめてウルウルしだすA

『俺だって初めてだよ、こんなの贈りたいって思えたの。

なんか揃いのものってさ、恥ずかしいってのもあるんだけど
縛ってるみたいな感覚もあるじゃん？だから苦手でさ

でもAとは縛るも恥ずかしいもなくて、純粋に同じものを身に付けて、いつでも感じてたいっていうか…

その、、俺としては長く待たせちゃうかもしれないけど、次はもっとキラキラしたでっけぇやつをちゃんと照れずに渡したいから、その日まで側に居てほしいなって思ってる

だから合鍵も遠慮せずに使えよ
お前俺が嫌がるかもーとか思って使ってねぇだろ？
嫌だったら渡してねぇし、不安がることなんか何もねぇよ』

『な？』と顔を覗き込めばポロポロと大粒の涙を流すA
『分かった？』と確認するとうんうんと大きく首を縦に振る

.
.

ひとしきり泣いたAは「翔太ってこんなロマンチストだったんだね」と木箱の上蓋の内側を撫でて呟く

　

『えっお前それ読めんの？』

「大学の時、何専攻してたか忘れた？」

『うわマジじゃん、、無意識に刷り込まれてたわ…』

「んふ、『ラテン語？なんそれー！』とか茶化してたくせに
　けどこんなのきっと日本語じゃ聞けないだろうから嬉しいな」

『…ん』

顔に血が集まっていく感覚がしてAから目を逸らす
まさかこんなにすぐ読まれてしまうとは思わなかった…

でもAの言う通り、俺はこの先どんなに格好つけたって
照れが勝って上手く伝えられないと思うから

せめて俺たちの初めてのお揃いを守ってくれるこの大切な箱には
俺の正直な気持ちを載せておきたかったんだよ。