甘ったるい彼等【短編集】(雪男) (ページ5)

今日:113 hit、昨日:306 hit、合計:225,050 hit

| ページ5

亮平 side

彼女曰く、俺のことなら何でもお見通しらしい。

こうして落ち込む日には分かりやすく慰めるわけではなく、例えるなら少し肌寒い日の毛布のようにふんわりと、でもしっかりと俺の冷えた心を温めてくれる。

「大丈夫、亮平くんは頑張ってるよ、大丈夫大丈夫」と何を言わずとも不安の芽を摘んでくれて

「さぁて一番はお風呂かな、ごはんかな、私かなぁ
　ちなみに今日の献立はねー」と空気を明るくしてくれて

「いっぱい頑張ってるもん、今日は一緒にいっぱい休もうね」
「今日は私も仕事残ってるから、隣でパソコンしててもいい？」
など、その日の俺のしたい事を汲んで最適な環境を作ってくれる

『エスパーみたい』と言うと「そうだよ？」とものすごい真顔で答えるから笑ってしまうけど、その完璧ともいえる俺の扱いに
本当に救われてる。

情けない姿を見せたくないと思いつつも、弱るとAちゃんに頼ってしまいたくなる俺を、上手に甘やかして寄り添い続けてくれる彼女がいなかったら俺はきっとここまで走れなかったと思う

.
.

『いつもありがとう、Aちゃん』と気持ち良さそうに眠る彼女のおでこにキスを落として、そっとベッドを抜け出す。

リビングのテーブルに用意してきたクリアファイルを並べ
明日の朝話そうと心に決めた。

ありがたいことに忙しくさせて貰ってる今
会える時間が減って寂しくさせてる自覚があるし
何より俺が限界になっちゃってるからさ

『あのね、Aちゃん

　もっと一緒に居たいから、俺と暮らしてくれませんか？』

Fin.