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夜の海に浮かんだ金色。
つまらない学校も
帰っても空っぽな家にも
自分がしっくりくる居場所は見つけられない。
唯一心が凪ぐのは、ここだった。
今夜はまん丸だ。
月光を受けて輝く波も穏やかで
呼吸する度に、体内にマイナスイオンが
入っていくような気がした。
友達にはあまり理解してもらえなくて
それよりカラオケで騒いだ方がいいと
とんちんかんな答えが返ってきた時は
見えてる世界、否生きている世界が違うんだと
理解してもらうことを諦めた。
きっと、私たちぐらいの年代はそっちの方が正しいんだろうな。
「 ね〜、こんな時間に何してんの〜?ナンパ待ち?笑 」
夜の海に最も相応しくない来訪者。
神聖な私だけの時間を穢さないでほしい。
そういうのは、友達みたいな人種が集まる昼時にしろ。
「絡んでくんな、めんどくさい」
「 うわひっでぇ笑 でも俺そういう女の子嫌いじゃないよ 」
隣の砂がこいつの体重に押し潰される。
回された腕に触れた肩から
ゾワッと鳥肌が立った。
気持ち悪い。最悪だ。
なんで男ってこうなのだろう。
嫌がっていることに気づかないって、
人として欠落しすぎていないだろうか。
『あのさあ、目障りだからそういうの他でやれよ』
そいつの後ろから綺麗な声がした。
「 邪魔だって、行こっか 」
『あほかよ。違う女とやれって言ってんだよ』
宵闇に隠れて見えない顔。
にこやかだった隣のやつが表情を苛立たせて振り返る。
と、固まった。
「 …チッ、ちゃんと捕まえとけよな 」
回されていた腕はあっさり離れて
立ち去った影から匂ったアルコール。
大の男の酔いを冷ますほど怖い顔だったのか。
近づいてくる足音に視線を寄せた。
見えたのはなんてことない制服を着た高校生。
だけど、私はその顔を知っている。
『だいじょーぶ?早く帰った方がいいんじゃね、
変なやつ増えるぞ』
第二ボタンまで開けられた胸元から覗く
雪の結晶のネックレス。
高校生にして暴走族を名乗る "白雪" のメンバーである証。
名前までは分からないが、その「9つの雪」は校内じゃなく
東京中に名前を轟かせている。
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hrr - おもしろくて一気読みしました!続き楽しみにしています! (4月10日 14時) (レス) id: 5934ce0412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カジャ | 作成日時:2024年3月20日 19時